2019年の中小企業景況、「改善の動きが弱まる見通し」。日本政策金融公庫 総合研究所調査より

日本政策金融公庫 総合研究所は2018年12月18日、「2019年の中小企業の景況見通し」調査の結果を公開した。2017年以降回復が続いていた中小企業の景況は、2019年には「改善の動きが弱まる」見通しだという。

今回の調査対象は三大都市圏(首都圏、中京圏、近畿圏)の中小企業の取引先900社で、そのうち572社から回答が得られた(回答率63.6%)。まず、前年に比べた2019年の業況見通しを尋ねたところ、21.1%の企業が「改善」、63.2%が「横ばい」、15.7%が「悪化」という結果になった。そして「改善」の数値から「悪化」の数値を減算した業況判断(DI:Diffusion Index)の数値を見ると5.4という結果になった。2017年(16.9)、2018年(11.0)と高い値で推移していたが、2019年の見通しは前年比で半分以下の数値だ。

「横ばい」という回答が増加。業況が悪化するわけではない

日本政策金融公庫 総合研究所はこの結果について「『改善』または『悪化』という回答が減少し、『横ばい』が増加した結果。業況が悪くなるというより、改善の動きが弱まるという表現が実態に近い」と解説している。

企業が扱う製品分野別に業況判断(DI)を見ると、2018年は設備投資関連(25.6)、電機・電子関連(22.7)、乗用車関連(16.7)、衣生活関連(16.2)、建設関連(7.0)、食生活関連(-4.7)という順だったが、2019年見通しではこのうち設備投資関連(5.4)、電気・電子関連(8.0)、乗用車関連(1.7)、衣生活関連(-19.5)の4分野でDIが低下するという結果となった。

日本政策金融公庫 総合研究所は、設備投資関連について生産調整など中国の需要が一服したこと、米中貿易摩擦の影響がDIを下げたとしている。また、電気・電子関連については電気自動車やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)など期待できる要素はあるものの、新型スマートフォンの販売が振るわないため、今後の生産量が縮小する可能性があるという判断がDIの低下につながったと分析している。

さらに、乗用車関連では設備投資関連と同様に米中貿易摩擦の影響でDIが下がっており、衣生活関連では消費者の購買意欲が高くないことと、10月の消費税率再引き上げが影響してDIが下がったと見ている。

建設関連(10.6)と食生活関連(19.7)の2分野では2019年見通しのDIが上昇している。日本政策金融公庫 総合研究所は、建設関連ではオリンピック需要が続くことと、大阪北部地震や西日本豪雨などの災害復旧工事への期待がDIを押し上げたと見ている。食生活関連では、2018年のDIが6分野で唯一マイナスとなっていたが、これは災害や天候不順などによる農水産物の不作によって、原材料価格が高騰したことが影響したという。2019年ではこのような要素の影響が薄れることや、消費者の購買意欲改善が期待できることからDIが上昇したとしている。

採用意欲は引き続き旺盛。設備投資の意欲は減少

従業員数と設備投資額についての回答をまとめると、2018年のDIは従業員数(12.6)、設備投資額(8.1)という2005年の調査開始以来最高の値を記録していた。人手不足に加えて、生産設備への積極的な投資があったことがこの結果につながった。

2019年見通しの値を見ると、従業員数のDIは15.6と、調査開始以来最高となった2018年の値を更新した。一方で設備投資額のDIは-0.6まで下落する見通しだ。人手不足は続くが、先行きを不透明と感じる企業が増えていることから、設備投資への意欲が減退しているという。

2019年は東京オリンピックと。消費増税前の駆け込み需要に期待

各企業が期待する要素についての回答をまとめると、2019年見通しの値では「2020年予定の東京オリンピックに伴う需要の発生」(17.3%)と、2019年予定の消費増税に伴う駆け込み需要の発生」(17.0%)の2要素に期待する企業が多いという結果になった。東京オリンピックに向けた需要については、2017年(16.0%)、2018年(16.5%)と、これまでも期待する企業が多かった。ただし、これまでは東京オリンピックに期待する企業は建設関連が最も多かったが、2019年は電気・電子関連企業が最も多く、設備投資関連、建設関連が続くという結果になった。オリンピック開催が近づき、関連設備や機器、耐久消費財の需要が高まると各企業が期待していると考えられる。

消費増税前の駆け込み需要は、2018年(9.6%)から急激に上昇した。特に建設関連や設備投資関連など、製品単価が高い分野で期待が高まっている。日本政策金融公庫 総合研究所は、2014年の消費税率引き上げ時は住宅など高額商品を中心に需要が伸びたという実績があることから、今回も期待できると見ている。

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