「不適切な会計・経理の開示」をした上場企業、2018年 は54社。東芝の不適切会計発覚以降、高水準が続く

2015年5月に発覚した東芝の不適切会計問題が表面化して以降、開示資料の信頼性確保や企業のガバナンス強化の取り組みを求める声は強まっている。東京商工リサーチは、上場企業、有価証券報告書提出企業を対象として、2018年(1〜12月)に「不適切な会計・経理」(以下、不適切会計)によって過年度決算に影響が出た企業ないしは今後影響が出る可能性を開示した企業を集計し、その結果を発表した。
2018年における不適切会計を開示した上場企業数は、2016年に次いで過去2番目の多い54社であった。


国内市場が成熟していることを受け、新しいマーケットを求めて海外展開を進めている上場企業は多い。拡大する営業網のなかでグループ各社へのガバナンスが行き届いていない企業は少なくない。また内部統制報告書を訂正する企業も相次いでいる。こうした背景には、会計処理の高度化や現場の人手不足などがあり、この状況を改善できないと今後も不適切会計が増える可能性がある。



内容別では、経理や会計処理ミスなどの「誤り」が22社(40.7%)で最多。次いで、「架空売上の計上」や「水増し発注」など、営業ノルマの達成を推測させる「粉飾」が21社(38.8%)と続く。

子会社・関係会社の役員や従業員による着服横領は11社(20.3%)で、「会社資金の私的流用」、「商品の不正転売」など、個人の不祥事についても監査法人が厳格な監査を求めた結果が表れているようだ。



発生当事者別に見ると、「会社」が26社(48.1%)と最も多く、2017年の21社から5社増えた。東京商工リサーチによると「会計処理手続きの誤りや事業部門で売上の前倒し計上などのケースもみられた」という。

「子会社・関係会社」は15社(27.7%)であった。レポートでは内容についても触れており「子会社による売上原価の過少計上や架空取引など、見せかけの売上増や利益捻出のための不正経理が目立つ」と説明している。なお、「会社」と「子会社・関係会社」を合わせると41社となり、全体の75.9%と多数を占めた。



市場別では、「東証1部」が26社(48.1%)で最多であった。2013年までは新興市場が目立ったが、2015年から国内外に子会社や関連会社を多く展開する東証1部の増加が目立っている。



さらにこれを産業別に見ると、「製造業」が17社(31.4%)で最多となる。製造業は、国内外の子会社、関連会社による製造や販売管理の体制不備に起因するものが多い。また「運輸・情報通信業」では、元社長や元役員が不明瞭な外部取引を通じて着服横領を行っていたケースなどが目立った。

相次ぐ企業の不祥事を受け、公認会計士の職業倫理に関する規則が2019年4月から厳格化される。これにより、会計士は監査を請負う企業で違法行為を発見した場合、監督官庁などへの通報義務が課せられる。このことから、同社は「企業側は、会計士との適切な距離感を保つと同時に、会計倫理の向上が一層求められることになる」と指摘する。

コーポレートガバナンスやコンプライアンスへの意識向上だけでなく、不適切会計を生じさせないためには社員の働きやすい環境づくり、風通しの良い組織への整備も急務だろう。

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