「人」を切らないAI経理戦略が会社をポジティブに成長させる


ルーティンが多い経理業務の多くは「AI(人工知能)」に、あるいはこれを活用した「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」によって置き換えられる、そのため近い将来には企業の“経理担当”という仕事がAIに乗っ取られるという言説がメディア等でまことしやかに語られることがある。『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』の著者であり、経営コンサルト・作家としても活躍する流創株式会社 代表取締役の前田康二郎氏に、これからの企業経営が必要とする経理の仕事、あるいは人材の在り方について話を聞いた。


経営コンサルタント・作家
流創株式会社 代表取締役
節約ウオッチ(iOS版)

前田康二郎 氏

数社の民間企業で経理総務、IPO業務、中国での駐在業務などを経て独立。現在は「フリーランスの経理部長」としてコンサルタント活動を行うほか、企業の顧問、社外役員、日本語教師としての活動、ビジネス書やコラムの執筆なども行っている。著書は『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』のほか、『スーパー経理部長が実践する50の習慣』、『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』、『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』『経営を強くする戦略経理(共著)』、『スピード経理で会社が儲かる』、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』、『自分らしくはたらく手帳(共著)』など多数。

「例外」に対して的確に対応できる。人間の知見はAIに代えられない

──近年、AIのテクノロジーが進化するにつれて、会社の経理に関わる仕事がAIに置き換わってしまうのではないかというネガティブな論調がメディアなどで散見されるようになっています。前田さんはこの風潮をどのようにみていますか。


前田康二郎氏(以下、前田) 私は経理の仕事については、一部「例外=イレギュラーケース」が発生しないものについてはAIに置き換えることは可能だと考えています。確かに経理の作業についてはAI技術と相性が良いため、多くのソフトウェアデベロッパーが自動会計ソフトの開発に着手、あるいは着目しています。ただ、おそらく多くのデベロッパーの方々は、経理の仕事に付きものである『例外』を想定できていません。

実際のところ多くの会社の経理担当は、ほぼ毎日例外の処理に時間を費やしています。厳密に言えばソフトウェアでも機械学習やビッグデータを活用すれば例外に対応できるのかもしれませんが、年に1・2回しか発生しない例外のために開発リソースを投入することは割に合いません。

「AIに置き換えられる仕事」は、職業や職種に依存しません。結局は「人」次第であると考えます。経理担当の中には優秀な人もいれば、一日中計算ばかりしている人もいます。例外に対して機転の利かない人は、AIに取って代わられてしまうかもしれません。もし、イレギュラーなケースにも柔軟に対応ができる優秀な経理であれば、会社の経営者が仕事を奪ったり、辞めさせたりすることはないでしょう。現実の経理業務を深くご存じない方が、声高に「AIが経理担当の仕事を奪う」と言っているのだと思います。


──企業の経営者もあまり惑わされるべきではないということなのでしょうか。


前田 そうですね。あまりにAIに対する期待ばかりが高まってくると、経営者の方々も「AIを導入すれば会社の業務が効率化されて、余分な労働力が削れるかもしれない」という発想に陥りがちです。現実の企業経営を考えれば、お金を管理するスペシャリストである優秀な経理担当者の存在はとても大事です。このことがわかるかどうかが経営者としての成功の分かれ目であると思います。企業という組織は、利益を追求して達成しなければつぶれてしまいます。お金の状況を正確に把握できる経理担当者がいらないという議論はありえないと私は思います。

私も、フリーランスの経営コンサルタントとして活動していますが、一人で全ての業務を回すことはとても大変です。もう一人パートナーがいれば、掛け算で規模が大きくできるだろうと思うことがあります。私はデジタル全盛の時代だからこそ、人と人が集まるアナログの集合体に価値があると考えます。人々の知見を集めて強固なコミュニティを作った方が会社の足腰は強くなるからです。

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プロフィールPROFILE

流創株式会社 代表取締役 前田康二郎(まえだこうじろう)

数社の民間企業で経理総務、IPO業務、中国での駐在業務などを経て独立。現在は「フリーランスの経理部長」としてコンサルタント活動を行うほか、企業の顧問、社外役員、日本語教師としての活動、ビジネス書やコラムの執筆なども行っている。著書に、『スーパー経理部長が実践する50の習慣』、『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』、『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』、『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』(以上、日本経済新聞出版社)、『経営を強くする戦略経理(共著)』(日本能率協会マネジメントセンター)、『スピード経理で会社が儲かる』(ダイヤモンド社)、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』、『自分らしくはたらく手帳(共著)』(以上、クロスメディア・パブリッシング)など。

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